栄養療法について

東洋医学において、食事(食養生)は「後天(こうてん)の本」として、極めて重要な位置づけを持ちます。五臓六腑の働きを支え、気・血・津液の生成源となる飲食物の質と摂取のあり方は、病の予防と回復において基盤的な役割を果たします。

 

当院では、従来の漢方治療・心理療法などに加え、近年注目されている「分子整合栄養医学(Orthomolecular Medicine)」の知見を積極的に取り入れ、より多面的な治療アプローチを行っています。
血液データや症状経過から栄養欠乏・代謝機能の偏りを読み解き、必要に応じて食事指導やサプリメントの提案を行うことで、特に以下のようなケースにおいて治療効果の向上を実感しています:

  • 漢方単独では改善しきれなかった慢性疲労・頭痛・不安感

  • ホルモンバランスや自律神経症状の背景にある微量栄養素の不足

  • 消化吸収能の低下により、食事からの栄養が十分に活用されていないケース

  • 精神的なストレスや過去の疾患の影響で、必要な栄養素の消耗が大きい状態

栄養療法は、サプリメントの使用だけでなく、以下のような日常の取り組みを含みます:

  • 食材の選び方(特にたんぱく質・鉄・亜鉛・ビタミンB群などの摂取バランス)

  • 食べるタイミング・頻度の調整(血糖値の安定化や副腎疲労の軽減を意識)

  • 消化吸収力を高めるための工夫(冷え・胃腸虚弱体質への対応)

ただし、こうした取り組みには一定の「主体的な実践力」が求められます。心身の状態によっては、最初から多くを実行するのが難しい場合もあります。そのため、当院では「できることから少しずつ」「その人のエネルギー量に応じた提案」を原則とし、決して完璧主義にならないこと、また治療と生活のバランスを見失わないことを重視しています。

 

また、医療としての安全性を担保するため、サプリメントの導入については、使用目的・推奨量・相互作用等の観点から慎重にご説明いたします。

 

ご希望の方には、分子栄養学に基づく血液検査の読み解きや、サプリメント摂取のアドバイスも行っております。

 

 

現代人の多くが抱える「食べているのに栄養が足りていない」「疲れが取れない」という感覚は、単なる気のせいではありません。漢方医学と現代栄養医学を架橋することで、身体の声をより多面的に理解し、治療の質を高めることが可能になると私たちは考えています。

 

 

※当院では、栄養療法を漢方治療の一部として位置づけており、通常の診察の中で必要に応じてご提案しております。
そのため、栄養療法のみをご希望される場合や、検査だけのご依頼には現在対応しておりませんので、あらかじめご了承ください。